経済同友会代表幹事の電子マネー発言について(その3)

(「その2」へ戻る)

LM曲線の右シフトが国民所得の減少緩和に寄与するというのは、単なるぬか喜びでした。
日本の超低金利を考えれば、貨幣の利子弾力性が非常に大きい、無限大である、いわゆる流動性のワナを考えなければならないでしょう。もはや十分に金利の低下した世界では、マネーサプライが増えたところで追加的な金利低下の効果は期待できません。

流動性のワナ


よってLM曲線が右シフトしたところで、利子率にも国民所得にも追加的な影響を及ぼすことはありません(A→Bへ)。

IS-LM分析(流動性のワナのケース)


日本のような超低金利の国ではLM曲線への効果が薄いこの政策ですが、極端な低金利でない国であれば、消費税率の引上げとキャッシュレス事業の推進によるマネーサプライの増加を組み合わせることで、より効果のある政策が実行できるかもしれません。
それはひょっとしたら「その2」で紹介したように、極端な場合には増税の効果を打ち消すほどのマネーサプライの増加を生み出すかもしれません。
ただIS-LM分析は短期分析に使われるツールなので、長期分析で物価の影響まで考慮すると、それほど良いことばかりではないかもしれません。金利の高い国はおおよそインフレ率の高い国なので、マネーサプライの増加がインフレ率の上昇につながり、かえって国に混乱をもたらすかもしれません。

ともあれ、学者でない私からしてみても、電子マネーが絡む経済政策はまだまだ面白い研究分野の一つだと思います。
「貨幣」という発明が、これまで人類の長い歴史の中で経済取引を円滑にしてきました。それに匹敵する、いやそれを上回る利便性を提供する電子マネーの存在は、そこから派生する影響も図りしれないと思います。

また余談ですが、新型コロナウイルスの蔓延に伴う一連の社会の動きは、経済学の分野にまたとない材料を提供してくれていると思います。
通常、経済を止めるなどという社会実験は恐ろしくて行われないものです。しかしこの度、ウイルスの蔓延を防ぐために各国、各地方が(もちろん限定的ではあるものの)その経済活動を止めてきました。
また疲弊した経済を立て直すため、現金給付その他多くの政策が各国で実施され、また今後されていくでしょう。アメリカのニューディール政策のように、経済における政府の在り方を再確認できる絶好の機会だと思います。
この未曾有の事態を打開するのに少しでも役立つような政府であれば、今後もその規模は変わらないでしょう。しかし全くもって役に立たないのなら、政府の規模を縮小し、互助的な組織や保険制度をより充実させた方が良い、という流れに傾くかもしれません。

今までわかっていたようで実はよくわかっていなかった経済というものについて、今一歩その真理に近づけるよう、経済学者のみなさんにはまたとないこの機会を活かし、人類の英知に一役買っていただきたいものです。

(終わり)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。