経済同友会代表幹事の電子マネー発言について(その2)

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「キャッシュレス・ポイント還元事業」ですが、私は大いに活用しています。というより、私は以前から家計管理のためにクレジットカードを極力使うようにしてきたので、自然にその恩恵に預かっているといったところでしょうか。
取引の履歴が逐一残るという点では、クレジットカードは非常に優れたツールです(支払いが後払いだということで、同じ機能を備えたデビットカードより自由が利きます)。不正利用等セキュリティの面で心配する方もいるかと思いますが、それは月々の利用明細を確認し、おかしな点があった際に都度カード会社へ連絡すれば十分に対応できます。それを理由に利用しないのは、セキュリティ面というより、月々の利用状況を把握しようとしないズボラな姿勢に問題の本質があるように思えます。

さてここからは、大学の経済学部で学ぶマクロ経済学の話です。
(細かい用語の説明については、マクロ経済学のテキスト等に任せます)

まず、事業の効果を見ていく前に、消費税率の引上げの効果を見ていきます。単純に増税を考えれば良いので、経済学部でおなじみのIS曲線が左にシフトし、所得が大きく減少します(IS→IS’)。

IS曲線のシフト


次に事業の効果を考えます。
増税のタイミングで「キャッシュレス・ポイント還元事業」を推進すれば、電子マネーやクレジットカードを使う限りにおいて増税の効果は打ち消され、IS曲線はシフトしません。
ただ現実的には、この事業の期間が9ヶ月間の限られたものであること、また電子マネーやクレジットカードを使わない・使えない層が確実に存在することから、IS曲線はいくらか左にシフトするでしょう。しかしながら、事業が何もない状態の左シフトよりも、その減少幅はかなり緩和されると考えられます(IS→IS”)。

さらに事業の効果としてもう一つ、LM曲線への影響を考えていきます。

その前に貨幣乗数について考えます。
事業によって電子マネー(のオートチャージ機能)やクレジットカード等の利用が進めば、各個人が持ち歩く現金は相当減るはずです。そしてその分預金が増えます。
これは経済学で言うところの現金・預金比率が小さくなることを意味するので、貨幣乗数〔(c+1)/(c+r)〕が大きくなります。貨幣乗数が大きくなれば、マネーサプライの元手となる日銀のハイパワードマネーが変わらなくても、マネーサプライは増えます。マネーサプライが増えれば、均衡利子率の低下と貨幣量の増加をもたらします。

マネーサプライ増加の効果


その結果として、LM曲線は右にシフトします。これをIS曲線と一緒に見ていきます。
事業があっても増税の効果を完璧には消せないので、IS曲線は左にシフトします(IS→IS”)。しかし事業の推進によってマネーサプライの増加も期待できるので、LM曲線は右にシフトします(LM→LM’)。

IS-LM分析


なお手書きの図はいい加減なので、IS曲線とLM曲線の同時シフトの効果としてちょうど国民所得が変わらない水準に落ち着いていますが、実際はIS曲線のシフトの効果がLMのそれを上回ると考えられるので、国民所得が多少なりとも減少するというのが常識的な結果でしょう。

さて、ここまでの分析を見て、経済学部出身の方はLM曲線の形状に違和感を覚えたと思います。
実は当初ここまでの流れをみて、「キャッシュレス・ポイント還元事業」とは何て優れた政策なんだろうと驚いたのですが、日本の現状を考えれば、LM曲線の右シフトが期待できないことは明らかでした。
次回では、LM曲線の修正をしたものを紹介します。

(「その3」へ続く)

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