ライフプランニングその6(年金の繰上げ・繰下げ)

以前の投稿「ライフプランニングその1」で、65歳から受け取れる年金として、国民年金(老齢基礎年金)と厚生年金(老齢厚生年金)の話をしました。
しかし実際は、この2つの年金とも例外的に60歳から受け取ることができます。但し、本来65歳から支給されるものを60歳から受け取るのですから、相応のデメリットがあります。細かい話は日本年金機構のホームページを見ていただくとして、ここでは、年金の繰上げ受給が得なのかどうかを簡単に見ていきます。

まず、老齢基礎年金も老齢厚生年金も、月単位での繰上げ可能です。つまり60歳というキリの良い年からだけでなく、61歳と3か月といった時期に受給を始めることもできるのです。
但しここでは話を単純にするため、60歳から繰上げ受給することを考えます。
まず、年金を繰上げ受給すると、繰り上げた月あたり0.5%年金額が減額されます。つまり、60歳から受給するということは、本来より5年遡りますので、0.5%×12月×5年=30%となります。ちなみに一度減額された年金額はその後戻らないので、死ぬまで本来額の70%で生活することになるのです。

果たしてこれは得でしょうか。「ライフプランニングその1」 で、男性の平均寿命がおよそ81歳、女性がおよそ87歳と紹介しました。
繰上げ受給しなければ、男性は平均的に16年(81歳ー65歳)満額の年金を受け取れるので、100(満額)×16年=1,600となります。一方繰上げ受給すると、70(30%減額)×21年(81歳ー60歳)=1,470となりますので、結論から言うと、繰上げ受給は平均的に損をします。
女性の場合は、100×22年(87歳ー65歳)=2,200が基準となり、繰上げ受給すると70×27年(87歳ー60歳)=1,890で同じく損をします。

男女ともに繰上げ受給が平均的に損をすることがわかりました。
実は、繰上げがあれば繰下げもあります。そして繰下げの場合は、先ほどの0.5%でなく0.7%をかけます。仮に70歳まで受給を繰り下げれば、0.7%×12月×5年=42%も増額します。毎年もらえる年金額が1.42倍に増えるので、一見すると得しそうですが、どうでしょうか。

平均寿命を考慮して計算してみると、142(42%増額)×11(81歳ー70歳)=1,562となり、65歳から受給する場合の1,600を下回ります。
つまり、男性の場合は繰上げでも繰下げ受給でも平均的に損をします。
女性の場合には、142×17(87歳ー70歳)=2,414で、先ほどの2,200という基準を上回るので、一見すると得をしそうです。

但し、 「ライフプランニングその3」 で紹介した、介護保険や後期高齢者医療制度の負担率が上がる境界付近にいた方は、これらの負担率が上がってしまうので、もらえる年金額が増えても、家計の医療費が増えるので、必ずしも得をしないかもしれません。
同様に、所得税率が変わる境界にいた方は所得税の負担も増える可能性があります。
さらに、65歳から70歳までの収入を年金以外で用意する必要があるので、現実的には繰下げはかなりハードルが高そうです。

よって、ここまでの結論は(あくまで平均的な話として)、繰上げ受給については、男性・女性ともしない方が良い(よほど自身の寿命に自身がない場合を除いて)です。
繰下げ受給については、男性はしない方が良い、女性については自身の年収等に気を付けた上で、可能ならやっても良い、といったところです。

以上、年金の繰上げ・繰下げという特例を紹介しましたが、素直に65歳の受給開始年齢から受け取ることをお薦めします。